先日、国連総会でトランプ大統領が一般討論演説を行いました。
その内容は、グローバリズムを拒絶し、愛国主義を尊重するというもので、各国の反発を招きました。
また、自らの政権のあげてきた成果を自画自賛すると、各国から失笑が漏れたといいます。
なぜトランプ大統領のこのような姿勢をとるのでしょうか。
以前に比べてアメリカの弱体化していることが、このような傾向を招いているのではないかと思います。
目下のところ世界で帝国となぞらえることができるのはアメリカです。
しかしそれにも陰りが見えてきています。
以前は世界の警察と言われていましたが、その影響力も低くなっています。
ソビエト連邦が瓦解してアメリカ一強にはなりましたが、
中国の台頭などもあり、相対的にみたアメリカの国力は以前ほど圧倒的ではなくなってきているように思えます。
オランダやイギリスが帝国としての力を失ったように、アメリカもそれを維持できなくなってきているのではないでしょうか。
そのため、世界での帝国のような地位を取り戻すにあたって、
弱体化の印象を与えないやり方を模索した結果が、今のトランプ大統領の姿勢のように思えます。
グローバリズムの拒否、愛国主義の尊重という宣言はとても強気な印象を与えます。
しかし、このことは裏を返せば、現在のアメリカの力では紳士的なやり方で世界を安定させ、
秩序を保たせるように影響を及ぼすことが難しくなった、ということを言っているようにも捉えられます。
そのため、これからは、他国には配慮せずにふるまうことによって、世界を振り回し、
そこにアメリカの影響力を見出そうと考えているようにも見えました。
あるいは、世界の国々で協力して善い方に向かうことはいいことですが、
アメリカは他国に比べて、自国の受ける利益が少ないと感じているのではないかとも考えられます。
同じように協力して、他国が得る利益のほうが多いように感じるのであれば、
協調をやめて自国の利益を最大化するように動くのかもしれません。
ビジネスの世界で利益を追求してきたトランプ大統領なら、そのように考えても不思議はないような気がします。
北朝鮮との外交も国際的な貢献にもなりますが、自国への脅威をなくすことにつながる行動です。
また、中国との貿易での争いに関しても、両国ともにダメージを受けそうですが、
中国のほうがアメリカに比べ深刻なダメージを受けると考えられています。
これは経済的に世界で各国に影響を与え、国際協調を無視したものですが、
世界経済にもアメリカ経済にも悪影響を与えることになっても、中国に最大限のダメージを与え、
アメリカとの国力の差を広げたいと考えたのではないでしょうか。
このように考えてみると、アメリカ一国の利益を見ればトランプ大統領の姿勢は筋が通っているように思えます。
アメリカはいまだ強国で、その振る舞いには世界は影響を受けざるを得ない状況です。
これに対し、他の国々はアメリカと同じようには好き勝手にふるまえないのではないでしょうか。
このような状態を利用して、トランプ大統領はアメリカの覇権を取り戻そうとしているのではないかと思いました。