先日、富山県の勝興寺で浄土真宗の僧侶がDJを務める音楽イベントが開催されました。
国指定重要文化財の主だった改修工事が完了した記念の催しとのことです。
お寺を身近に感じてもらおうという考えがあるようです。
今回、音楽を紹介した僧侶は、実際に10年以上お寺で音楽イベントを開催している方や、
20年以上DJ経験のある方ということで、ヒップホップやレゲエの曲が流されたということです。
浄土真宗のような伝統的な仏教の宗派で、このような現代的なイベントを行うことはとても興味深いと思いました。
また、長年にわたって実際にDJ経験や音楽イベントなどを行っている僧侶による活動ということも、
付け焼刃な感じがなく、自然に現代社会に生きる人々に触れ合おうとしている感じがして好感が持てるように思います。
日本の伝統仏教はこれまで、檀家制度があり、お葬式など法事で収入が得られたため、
それに安住して、それ以上に人々とつながりを持とうとする姿勢が見られなかったように思います。
実際、多くの人は葬式仏教という言葉があるように、
仏教はお葬式や法事、お墓参りの時だけ関わるというような形骸化してしまったイメージを持っているように思います。
しかし、最近は人々のお寺離れが進み、経営など立ち行かなくなる恐れのあるお寺もあるといいます。
そうした状況の中、伝統仏教も少し慌て始めているのではないでしょうか。
今回のようなイベントは、仏教について人々に関心を持ってもらい、
その生活に溶け込む方法の一つとして優れているのではないかと思います。
そもそも、宗教とはどのようなものでしょうか。
宗教は人を救うためにあるのではないかと思います。
お釈迦様は王子として生まれましたが、人間である限り生老病死からは逃れられないことを知り、
その苦しみをなくすにはどうすればいいかを探すために出家し、悟りに至ったといいます。
仏教は本来このように人間として生まれた限り離れることのできない苦しみについてなど、
生きづらさを感じる人々の深刻な問題に関わり、人々を救うものだったと思います。
しかし、今の日本の仏教は、一部ではそのような役割を果たしているかもしれませんが、
大半はそのような役割は果たせず、いわゆる葬式仏教となってしまっているように思えます。
そうした、伝統仏教の怠慢が、人々の宗教離れを引き起こし、
社会問題にもなるような、まがい物の宗教もどきに付け込まれる一因になったのではないでしょうか。
では、今の日本の社会におけるお寺と人々の生活の理想的な在り方はどのようなものでしょうか。
それは、やはりお寺がもっと親しみやすくなることではないかと思います。
今回取り上げた音楽イベントなどのように、仏教のイメージではないものを取り入れた催しをお寺で開いたり、
利用したい人に公民館などのようにお寺を開放することも考えられると思います。
そうしてお寺にまず足を踏み入れてもらうようにして、住職などはそこで世間話などに加わるといいと思います。
そうすることで、僧侶は人々の様子を実際に肌で感じながら、
仏教的な視点からなにか助言を与えたりすることもできるのではないでしょうか。
個々のお寺では、精力的に活動していたり、土地柄的に人々の生活に溶け込んでいるところもあると思います。
しかし、伝統仏教の存続を考えるならば、仏教界全体として、
このような取り組みを義務付けるくらい真剣に取り組んでもいいのではないかと思いました。