政府は日本とASEAN(東南アジア諸国連合)と進めてきた共同研究の成果を実用化するため、
日本や東南アジアの企業へ支援を始めるそうです。
共同研究は2008年から行われ、10年が経ち様々な成果が上がっているといいます。
主な共同研究の成果の一つに熱帯・亜熱帯植物からの高品質なバイオ燃料の製造がありました。
そこで今回は日本におけるバイオ燃料について書いてみたいと思いました。
燃料問題に関しては、以前から様々な指摘がされています。
石油などに関しては、このまま使っていけば、いずれ枯渇すると言われています。
また、二酸化炭素排出の増大による気候変動の問題などから、
その使用自体についても制限していくことが望ましいといわれています。
そうしたなか、対応策としてバイオ燃料があります。
バイオ燃料は生物由来で再生可能な燃料であり、持続的な使用が可能です。
また、燃料として使用する際は二酸化炭素を排出しますが、
原料作物の成長過程で二酸化炭素を吸収するため、二酸化炭素の排出量は結果としてゼロになるとされています。
しかし、日本はバイオ燃料の事業化が難しいといわれています。
アメリカなどは広大な国土があり、大量のトウモロコシを栽培しバイオ燃料の大規模な生産が可能となっています。
これに対し日本は国土が狭いため、バイオ燃料用の作物の大量生産が難しい状態です。
そのため、バイオ燃料に関しては現在は主にブラジルからの輸入に頼っているようです。
東南アジアでの共同開発によって、高品質なバイオ燃料がの生産が事業として安定すれば、
日本としてもバイオ燃料の調達の選択肢が増え、コストの低下にもつながるかもしれません。
また、このさきずっと輸入だけに頼ることは問題があるため、国産のバイオ燃料の研究が進められているようです。
ただ、先ほど述べたように、バイオ燃料のためだけに大量の作物を生産するのは国土の問題で難しいため、
パルプやコーヒーのかす、きのこの廃菌床などの廃棄物の非可食性植物脂質や、
ユーグレナやスピルリナなどの微細藻類脂質を原料にするバイオ燃料の生産の事業化が目標にされているようです。
これまで見てきたように、日本としてはバイオ燃料に関しては、
東南アジアでの共同研究ではバイオ燃料の調達先の選択肢を増やすとともに、
国産のバイオ燃料を実現するため微細藻類脂質や非可食性植物脂質による燃料生産の事業化を急ぎ、
燃料調達に関するリスクの分散を図っていることがうかがわれます。
そして、政治的にも、東南アジアにおいては科学技術や経済発展への協力で日本の影響力を高め、
また、国際社会においては、国連が提唱している「持続可能な開発目標(SDGs)」にも沿った、
環境に配慮した再生可能で持続可能なエネルギーの開発で、
日本の存在感を増すことをねらっているようです。