色彩によってトイレのにおいが軽減される効果があることが注目されていると報じられていました。
このことは大手前大学の山下真知子教授による実験によって分かったことだそうです。
さっそく塗料メーカーからも問い合わせが寄せられているようです。
視覚と嗅覚は違うもののように思えますが、何かつながりや関りがあることがうかがえて面白いと思います。
今回の実験は21校の小中学校に協力してもらって200か所のトイレの色を塗り替えることで行われました。
グレーやベージュの壁を赤、青、緑、オレンジの4系統19色のいずれかに変えたそうです。
そうして、約6800人の児童や生徒のアンケートの結果、
においの軽減の効果を実感しているという回答が得られたということでした。
内容としては赤系で17~25%、青系で13~23%、緑系で16~33%が軽減されたという回答があったということで、
におい軽減の実感効果は緑系が少し優位のようです。
ただ、オレンジ系の色に関しては11~13%と他の系統に比べ効果が低い結果となっていました。
これは、黄色に近い色が酸っぱさという刺激臭につながるためではと分析していました。
また、系統に関わらず濃い色に塗られたケースが最も効果があったようです。
山下教授は、視覚的な刺激が強くなることにより、相対的に脳がにおいの印象を持たなくなったのではと分析しています。
この山下教授の分析については、嗅覚と他の感覚の違いを考えるとより分かりやすいと思います。
嗅覚は他の視覚、聴覚、味覚、触覚と違って、直接すぐに大脳皮質に届く仕組みになっています。
普通のトイレのベージュやグレーといった色彩では、特に視覚的に注意をひくこともなく意識もしないでしょう。
その場合、トイレに入った時にはにおいだけが強く注意をひく情報として直接に脳に届いてしまうことが考えられます。
しかし、トイレに入った瞬間にそれまでと違った鮮やかな色の壁が目に映った場合は、
視覚においても強く注意をひかれることになり、意識が分散されにおいが軽減されるように感じるのだと思います。
他の感覚と違い大脳皮質に直接届くにおいの仕組みは、
アルツハイマー型認知症においても注目されていて、アロマなどの刺激がその軽減に役立つといわれています。
アルツハイマー型認知症においては嗅覚がまず衰えるといいます。
脳に届きやすい嗅覚が衰えるということは脳への刺激が減ることにつながり、さらなる脳機能の低下につながります。
アロマによって嗅覚を意識することで脳を刺激し、脳機能の向上につながり、
アルツハイマー型認知症の予防や改善に役立つという研究結果もあるようです。
このようにみてみると、嗅覚や視覚など、当たり前のように感じている人間の感覚も、相互の関係や脳機能の仕組みなど、
まだまだ分からないことの多い興味深い問題だと思いました。