カンボジアで7月29日総選挙が行われ、1985年以来政権の座にあるフン・セン首相が率いる与党・カンボジア人民党が圧勝しました。
しかし、その内容は、自由で公平な選挙とはいえないもののようです。
カンボジアではフン・セン政権の強権支配が続いています。
前回の総選挙で人民党を脅かす存在となった救国党は党首が国家反逆容疑をかけられ、
最高裁判所によって党の解散を命じられました。
こうして最大野党は選挙から締め出されました。
他の野党は選挙をボイコットすることで、抗議を示そうとするも、
政権はこれに対し法的措置をとると発表しこれを阻みました。
ボイコットされては選挙の勝利の正当性が薄れるからです。
政権に批判的なメディアへの弾圧も強めていた。
長い続く英字紙が巨額の税金の支払いを命じられ、廃刊となったといいます。
政権に都合の悪いニュースサイトをインターネットで表示させないよう、プロバイダーに命じました。
有権者への締め付けもなされているようです。
政権は高圧的に投票を求めていて、有権者は職場での不利益や、当局の摘発などを恐れているといいます。
欧米諸国は、フン・セン政権による反対勢力弾圧を強く批判し、選挙支援を停止したほか、政権への制裁にも動いています。
アメリカでは、ホワイトハウスが「自由でも公正でもないし、国民を代表するものでもない」と声明を出し、
下院はフン・セン氏ら政権中枢に対し入国制限などの制裁法案を可決したといいます。
欧州連合(EU)も関税の優遇措置の撤廃を検討しているようです。
これに対し中国は他国の内政に不干渉を強調していて、
選挙監視員を派遣するなど、カンボジアの後ろ盾のようになっています。
日本の菅義偉官房長官はカンボジアなどと「連携、協力を進めていきたい」と簡単に述べ、強い政権批判は控えています。
欧米諸国と足並みを揃え不正な選挙を批判したいが、
カンボジアでの中国の影響力がさらに高まることも避けたいという思いからか、結果として微妙な姿勢となっています。
しかし、欧米諸国をの視線を気にせず支援する中国に、カンボジアでの影響力で対抗するのも難しいのではないでしょうか。
この選挙における問題は、人権や民主主義が尊重されているとはいいがたいことにあります。
今回の日本の態度では、国際社会からは、日本の人権や民主主義に対する意識に疑問が持たれるでしょう。