今回は行政組織法についてです。
法主体として行政主体は私的主体とは異なる扱いが求められます。
そこで行政主体にはどのようなものがあるか、行政機関とは何か、
行政組織内部の関係はどうなっているかなど、見ていこうと思います。
行政主体について
行政主体とは行政上の権利義務を負う法人で、その名前と責任で行政活動を行うものをいいます。
多くの人の利益である公共の利益に関わる行政活動をを行う主体が行政主体と呼ばれ、
私人である個人や営利を追求する会社とは区別されて扱われます。
行政主体の代表的なものは、国や地方公共団体があり、
他に、土地改良区や健康保険組合など公共的な事業を行う公共組合や様々な独立行政法人なども行政主体となります。
行政組織法はこうした行政主体の内部で組織を構成する人々の関係や、行政主体同士の関係を規律する法律になります。
これに対し、行政主体と私人の間の関係は行政の外部関係として、行政作用法が規律しています。
作用法的行政機関
行政主体自体は組織であり現実の人間ではないので、実際には組織を構成する多くの人々の活動が行政主体の活動になります。
これらの人々が組織の中でどのような役割分担するかが法律で定められています。
このような役割を割り振られた人を行政法学ではそれぞれ行政機関と呼びます。
この行政機関は、行政庁、補助機関、諮問機関、執行機関などに分類されています。
行政庁というと、一般的には省庁や役所などをイメージすると思いますが、行政法理論では違った意味の専門用語になっていて人のことになります。
ここでは、行政庁とは行政主体としての意思を決定しそれを表明する権限を持つ行政機関のことになります。
例えば、大臣、知事、市町村長など独任制のものが原則ですが、
公安委員会など複数の人で構成される合議制のものもあります。
補助機関は、文字通り行政庁の補助をする機関です。例えば、中央省庁、県庁、市役所の職員などが補助機関になります。
諮問機関は、審議会や調査会など、行政庁に求められて意見を述べる機関です。
執行機関は、実際に実力行使を行う機関です。例えば警察官、収税官、自衛官などです。
このように、国民に対する権限がどのように振り分けられているかの視点からの捉え方を作用法的行政機関と呼びます。
事務配分的行政機関
この行政機関の概念については、作用法的行政機関とは別にもう一つ事務配分的行政機関という捉え方があります。
例えば国家行政組織法の条文では、内閣府、省、委員会、庁という組織全体を国の行政機関としていて、
先ほど説明した意味とは違った意味で行政機関という言葉が使われています。
これは、どの事務をどの部署に振り分けるかという事務配分の視点から捉えるもので、事務配分的行政機関と呼ばれます。
指揮監督権
行政主体としての意思を統一するため、組織内部で働く多くの人の活動が一つになることが求められます。
そのため、行政機関はピラミッド構成となっていて、上級行政機関には下級行政機関への指揮監督権があります。
ここでの行政機関については作用法的行政機関の概念です。
指揮監督権には監視権、同意・承認権、訓令権、取消停止権、権限争議裁定権がありますので説明していきます。
監視権は、上級機関が下級機関に対して調査し、報告を求める権利です。
同意・承認権は、下級機関の権限の行使に関して、上級行政機関による同意や承認を必要とするものです。
訓令権は、上級行政機関による訓令や通達といった形でなされる命令や指示です。
取消停止権は、上級行政機関は下級行政機関の行為の取消や停止ができるというものです。
権限争議裁定権は、下級行政機関同士の間の権限に関する争いを裁定できる権利のことです。
権限の代行
行政機関の権限について、本来その権限を持つ行政機関ではなく別の行政機関が行うことは、
権限の代行と呼ばれ、代理と委任の2種類があります。
権限の代理は、本来の行政機関に代わって代理機関が行いますが、本来の行政機関の行為として扱われます。
法律に基づいて要件が定められている法定代理と、
法律に基づかす本来の権限をもつ行政機関の授権によって生じる授権代理があります。
権限の委任は、ある行政機関の権限の一部が別の行政機関に委任されることです。
この場合は、権限の一部が受任機関に移動し、委任期間はその権限を失います。
そのため、移動した権限については受任機関の行為として扱われます。
他に専決・代決があります。
これは、行政庁の権限を補助機関が決裁することをいいます。
たとえば、行政庁の印を補助機関が公文書に押印して案件を処理することです。
この場合、外部に対しては行政庁の名でなされたこととなります。
前の内容はこちらです。
行政上の法律関係について